マツドサイエンティスト・研究日誌 保存版
月のような推進システム

初出:2010年07月03日 元々のブログ・コンテンツへのリンク

一昨日のブログで、月の動きを模倣する推進システムなんて書いたものだから、「とんでも系」じゃないかと誤解さてるかも知れない。

一応、ちゃんとした論文を紹介しておくと
「Pumping a tethered configuration to boost its orbit around an oblate planet」
Breakwell, J. V.; Gearhart, J. W. 著
NASA, AIAA, and PSN, International Conference on Tethers in Space, Arlington, VA, Sept. 17-19, 1986, Paper. 23 p.
である。残念ながら、ネット上でフルペーパーは見つからなかった。

アブストだけなら ここ から読める。

私が書いた方は、 このPDF だ。電子データが残っておらず、紙からのスキャンで失礼。
私の論文は、関連論文のサーベイしているときに、上記のBreakwellの論文を見つけたから、途中で止めて、未発表のものだ。「重力場推進」などとエキセントリックな書き方をしているのは、若気の至りと言う事で許してもらおう。

論文読めば、判ると思うが、回転するテザーで推進力を得ようとするもの。意外と簡単な仕組みでしょ。

私の場合、テザーを研究していたわけではなくて、月の動きを模倣しようと、可能な限りシステムを簡略したらテザーになってしまった。
宇宙機の推進方法は、ロケットやイオンエンジンのようにリアクション質量を内蔵しているのが普通で、例外的にソーラーセイルやスイングバイがある程度だ。単一の天体を相手に、重力だけで推進するのは野心的な試みだったと思う。

物理的にちゃんと成立するし、技術的にも実現可能だろう。そう言う意味では「とんでも」ではない。

なぜ、これの実現を諦めたかと言うと、一つには先を越されたこともあるが、それ以上にコスト的に割が合わないからだ。
600kmの高度を飛ぶ人工衛星は、一日に約6.5メートル高度が落ちる(一般的なピギーバック衛星の一辺50センチの立方体で、質量50kgとして計算)。そのため、何も制御しないと、約28年で墜落する。
これに「月のような推進システム」を使えば、14キロの長さのテザーを付けて回転させると、半永久的に墜落しないシステムが作れる。もちろん、エネルギーは太陽電池だけですむ。

開発コストは、ロケットを除いて 20億程度で実現可能だろう。長さ 14キロのテザーが、ちょっと難しそうだけど。
でも、化学推進を使えば、ヒドラジンスラスタなんて量産されているから、1個1千万円以下で手に入る。タンクやバルブを含めても1億円程度かな。

とてもじゃないけど、信頼性やコストの点で化学推進にかないそうも無いので、諦めたと言うわけ。
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